「まあ……寝ないね」

開店前、しかも姉さん達が使う部屋で
あんなに呑気に寝る人は他にいないだろう



「ま、この際お前もいつきに女にしてもらえば?
いつきがこの店にいる内に」

「それ、どういう意味?」

「そのまんまの意味」


からかうように私に言って

シン君はごみをまとめると


「じゃーな」


そのまま去っていった




「……まったく、シン君は私より子供なんだから」


呆れの混ざったため息をこぼして
ぱたんと雑誌を閉じた


ノリがほんとに中学生


まあ…
シン君の言ってることも間違いじゃないけど


姉さん達みたいな色気や可愛さ、綺麗さは私にはない


顔はお母さんゆずりでそんなに悪くはないけど

肉付きの悪い貧相な体は
色気なんて言葉には程遠い


「まあ、困ってはないし」


お客さんを相手にしてるわけでもない



それに
私がいつきさんと話したり会ったりすることも

そうそうないだろう


いつきさんはほぼ毎日
オーナーと部屋に籠って事務作業してるから



ただの下働きの私が

雲の上のような存在のいつきさんと関わることはきっとこの先もないだろう



この時はそう思っていた