たとえば、こんな人生も

「さっさと出ていけ。部外者」


床に転がっていたビール瓶を手に取ると
あの人はそれをテーブルの縁で叩き割って
その突先をいつきさんに向けた


……っ!

……だめ、だめだめ…やめて……


最悪の事態が頭を過(よぎ)る


「……い…つきさ…」


顔面蒼白だったと思う
なんとか声を絞り出して、いつきさんを呼ぶ

いつきさんはちらりと私に視線を向けて


「…」


まるで安心させるように小さく微笑んで
また、あの人に視線を戻した


目の前で脅されてもいつきさんは動じず
毅然とした態度で言葉を返す



「関係あります」



そして



「この子を妻にと思っていますので」



…
…
…


続いていつきさんの口から出た言葉に
あの人はもとより私もぽかんとして


しんと静まり返る室内


「……こいつを妻にだと?
なにを馬鹿なことを…
悪趣味な冗談はやめろ」


私より早く我に返った様子のあの人が
理解できないと言わんばかりの表情で
いつきさんを見つめる


「俺は本気です」


いつきさんは変わらず真剣な顔


「…あなたは、気付くべきです
自分がどれほど大切なものを
蔑ろにしているのかを
痛め付け、傷付けているのかを」


「きちんと向き合ってください
現実に。ご自分とこの子に。」


「……失ってから気づいても遅いんですよ」


一瞬、悲しそうにいつきさんの表情が動く