たとえば、こんな人生も

「ひなた。食べたらあんたも―」

「さゆ姉さん。まゆちゃん、体調いいの?」

「……ああ。それ」


お風呂から上がってきた姉さん
その言葉を遮って
手にした写真を見せれば嬉しそうに笑う


「ええ
もしかしたら仮退院できるかもしれないの」

「そうなんだ。良かったね」

「ええ」


さゆ姉さんの、年の離れた妹のまゆちゃんは
重い病気を持って生まれて

生まれてから今までずっと
ほぼ病院で生活してる

その治療費と入院費を稼ぐために
さゆ姉さんはあのお店で働いてる



見つけた写真の日付はつい最近のもの

滅多に病室から出れないまゆちゃんが
病院の中庭でさゆ姉さんと楽しそうに笑ってる

かなり、病状が安定してるってことだ


「早く一緒に暮らせるといいね」

「そうね」


その日を待ちわびるように
静かに優しく笑うさゆ姉さんを眺めながら


いつも「自分」のためじゃなくて
「誰か」のために頑張ってる姉さん達が

報われる日が早く来ますようにって


私はずっと心の中で祈ってた