荷物を床に置いて
ベッドの縁を背にして、そのまま自分も床に座り込む


「…」


家に帰ってきたはずなのに、帰ってきたって気がしない


……落ち着かない


静かで暗くて
でも、これが当たり前だったはずなのに

それなのになんで

どうしてこんなに…胸が苦しいんだろう




「……あれ…?」


膝を抱えて、じっと床を眺めていると
段々と視界がぼやけて

つーっと、頬に涙が伝う感覚


「……やだな」


自分が今
寂しさや悲しさ、心細さを感じてるんだって自覚する


弱くなった


……というより、弱さを思い出した


いつきさんに出会ってから


「……そういえば、いつきさんの前だと私、簡単に泣いてたな…」


殴られても

蹴られても

切りつけられても

どんな暴言や暴力を受けても
あんな風に泣いたことはなかったのに

こんな気持ちになったりすることはなかったのに


「…いつきさんって不思議な人だなぁ」


ごしごし涙を拭いながら、苦笑を浮かべる


「…」


ポケットからカードキーを取り出す


……受け取ってしまったのは、どうしてだろう

言われた瞬間、返事に悩んだのは

断ることができなかったのは


……どうしてだろう


「…」


ぎゅっと抱き締めるようにカードキーを胸に当てて、そのまま私は膝に顔を埋めた