たとえば、こんな人生も

――……


「ほら」

「わ~」


小さなアパートの
小さな部屋の
小さなテーブルの上に置かれたのは

私の大好物のオムライス



「さゆ姉さんのオムライス好き」

「…そ」

「いただきます」


ぱくりと口にいれて
口一杯に広がる美味しさに悶絶


「美味しいっ」


にこにこ笑えば
どこかまだ不機嫌そうだった
さゆ姉さんの表情が崩れて


「……そう」


柔らかい控えめな笑顔が覗く


「あたしは先に風呂入るわ
ゆっくり食べてなさい」

「うん。いってらっしゃい」


お風呂場に向かう、さゆ姉さんに手を振る


「さゆ姉さんのオムライスは
食欲なくても食べれるなぁ」


久しぶりにちゃんとしたごはん食べた

ここしばらく、味がよく分からなくて
後は、おなかも空かなかったし
ずっと軽いお菓子と飲み物だけの生活だった


だけど、今日は味がする

かなり美味しい

ぱくぱく食べ進めて、あっという間に完食


「ごちそうさまでした」


ぱちんと手を合わせ
食べ終えた食器を洗って


……あ


カラーボックスの上に置かれた写真を見つける


……これ……