「けっ! 何が指輪物語だよなぁ。『永遠の愛を誓う』なんて、なんか女に縛られるみたいで怖いじゃんか」


女子たちのヒソヒソ話に聞き耳を立てていた寛太が、顔をしかめながら嫌そうに言った。





今日はT学園高等学校の入学式。


生徒たちは本校舎から離れた寒い講堂に集められ、さらに寒さを誘うような冷たく硬い木のベンチに座っていた。

これで暖房が入っているのか?と思うほど冷えた講堂内に、生徒たちからは「寒い」という声が漏れていた。

まだ式は始まっていないのに緊張感が漂う。

新入生、在校生に関わらず、生徒の周りをまるで目を光らせるように歩き回る先生の様子に、俺はただならぬ雰囲気を感じ取っていた。





「卒業式に永遠の愛を誓うなんて、男にしたらプレッシャーのなにものでもないよなー」


「……」


知ってか知らずか、式が始まる前とは言ってもペラペラと話す寛太に俺は返事もせずにいた。



「なんだよ海! 無反応かよ。おまえはいいよな、中学からの彼女が同じ学校に入学したんだから。オレなんて何年フリーだよ」



「そこ! さっきからうるさいですよ! 入学式が始まります、静かにしなさい!」


「げっ!」



思い切り指をさされ叱られた寛太は、恥ずかしそうに顔を伏せた。



「ぷっ……」


俺は寛太を見て吹き出す。


横で笑う俺に、寛太は目を細めにらみつけた。