「ねーねー! 図書室に仙人が居るって聞いたんだけど、見た!?」
「仙人!?」
仙人と聞いてすぐ、ド〇ゴン〇ールを思い出して、そんな奴居るわけないだろ!ってツッこむところだった。
「だってー、図書室って生徒会室の隣でしょ? 仙人見たかなって思って」
「そんなやつ……」
「居るわけない」と言いかけて、もしかしてヒサ先輩のことを言っているのか?と気付いた。
仙人……。
その言葉にぷっと吹き出した。
「なに?」
「いや、なんでも。図書室には入ったけど、受験勉強してる先輩しかいなかったよ」
「受験勉強? そっかー。仙人居るなら見に行こうかってみんなで言ってたのに」
図書室に近づく生徒は居ないってウワサが広まっているのに、そんなところに毎日朝早くから、午後遅くまで籠っていたら“仙人”なんて思われても仕方ないよな。
でも、仙人なんていうよりずっと……可愛い人だったけど。
「ねぇ生徒会どうするのー? 放課後こんなに遅くなって会えなくなるの嫌なんだけどー」
椿はふくれたように言った。
「……そうだよなぁ」
部活にも入りたくないし、何かやりたいことがあるわけじゃないけど、こんな時間まで拘束されて、放課後遊びにも行けないって最悪だよな。
やっぱり辞めよう。
そう思った時、見上げた校舎、灯りがつく窓にヒサ先輩の姿が見えた。
暗くなった空を高く見つめていた。
「……」
そういえば……なんで、涙……。
あの時、俺が生徒会室を探して図書室に入った時、ヒサ先輩は泣いてたよな……。
なんで――――。