12月のその日は、真冬とは言えない暖かい日で――――。
冬の澄んだ空気と、まるで春が近いような柔らかい風に包まれていた。
そして、優也兄ちゃんを送るにふさわしい青空をしていた。
遠い田舎町での葬儀のため、父さんだけの出席で、朝早くから準備をしている父さんを俺はソファに転がり見ていた。
「はぁ……」
「海、朝からため息なんてどうした」
支度をしながら父さんが言った。
「べつに……」
優也兄ちゃんのすごさは前々から知っていたはず。
だからこそ優也兄ちゃんに憧れて、優也兄ちゃんのことをもっと知りたかった。
どんなふうに高校生活を過ごしてきたのか、優也兄ちゃんのようになりたいと思っていたからT学園に入学することを決めた。
でも……今、自分がこんな想いに囚われているなんて……。