少しずつ、少しずつ肌寒さが増すと、見上げた大イチョウの寒そうな枝ぶりで、季節の移ろいを感じた。
あれからヒサ先輩は図書室で勉強することが少なくなった。
俺が避けられていると感じた理由が、アルツハイマー病のことが理由だなんて思いもしなかった。
若年性アルツハイマー病が稀なものだと知っていても、最愛の人がその病気になったんだ、もしも……と考えても仕方ない。
だけど、俺が若年性アルツハイマー病になるなんてことはかなりの低い確率だ。
『私の周りの人が……大切と思える人が、私の元から去っていくことが怖い……』
ヒサ先輩があんなふうに思っていたなんて……。