「こんな花束もらったの初めて……」


先輩はバラを見つめ微笑んだ。


やわらかいオレンジ色が、ヒサ先輩の笑顔をもっと優しく見せた。



「このライティングに炎の演出、すごい癒される」



「うん、このキャンプファイヤーみたいな演出はね、優也センパイが考えたものなんだよ。寒くなってくる季節に向けて、やわらかい優しい炎、見る人を癒せるものって考えたんだ」


「……優也兄ちゃんが……」


さすがだな、優也兄ちゃん……。



「昔の人は、獣が怖がる火を灯しながら食をとることで安心を得たんだ。だから人間の遺伝子には火を見ると癒される、落ち着くという気持ちが組み込まれてるって話」


「へ~そうなんだ。海くん詳しいね」


「優也兄ちゃんもそれを知って、この演出を考えたのかな。だから、ほら、みんな笑ってる」


「うん、みんな笑顔がキラキラしてるね」




こんな学園祭を経験したら、いい思い出になるし、来年もまたこんな学園祭を作りたいと思うんだろう。

田辺生徒会長が力を入れていた意味が、やっとわかった。



炎の周りで楽しそうにする人々の笑顔がとても眩しくて、そんなみんなを見つめるヒサ先輩の横顔が、とても美しいと思った――――。