式が終わり、新入生は次々に教室に戻って行く。
5クラスある最後のクラスになった俺と寛太は、急かされることなくのんびりと講堂を出た。
本校舎から離れた講堂へとつながる長い渡り廊下、その奥に見えるのは青々とした芝生が陽の光に照らされて、キラキラと輝いていた。
更にその奥、広い校庭にバスケやサッカーのゴールが置いてあるのが見えた。
この学校はスポーツにも力を入れていると聞いたことがあった。
「……スポーツねぇ」
俺は昔から何か目標があったことがない。
サッカーもバスケも、案外なんでもスポーツは得意だったけど、部活もいつも中途半端で、野球一筋で夢中になっている寛太が羨ましかった。
それは今も一緒で、高校生になったからといって今後の何かとか、新たな部活に入って高校生活を満喫しようなんてことも思っていなかった。
今の俺の目的は、優也兄ちゃんが過ごしてきたこの学校で、もっと優也兄ちゃんのことを知ること、そして優也兄ちゃんの愛した人を探すこと。
ただ、それだけ。
って……『愛した人』なんて連呼してるけど、“愛”なんてもの正直ぜんぜん分からない。