ジメジメとした憂鬱な梅雨が明け、暑い夏がやってくる気配を感じていた。
雨続きの日々で図書室の窓も開けることが出来なかったけど、窓を開け久しぶりに空気を入れ替える。
季節の変わり目の空気の違いは、いつも心地よくて好きだった。
隣の生徒会室からは、生徒会長の奈々ちゃんがまだ作業している音が聞こえていた。
秋の学園祭に向け、毎日遅くまで頑張っている。
私はあえて声をかけず、図書室を出た。
B棟から3年の昇降口へ向かう。
さすがに生徒の姿は見えなくて、残っているのは運動部くらいに思えた。
自分の下駄箱を開けると目に飛び込んできたのは、めいいっぱいに詰められた紙……。
「……何これ……」
詰め込まれた紙を手に取り開く。
「……」
そこには、『バカ』とか『ブス』とか『ジャマ』とか、あきらかに嫌からせである文字が書かれていた。
「……」
わたしは近くにあったゴミ箱を持ってくると、その紙をゴミ箱に押し込んだ。
これが誰からの嫌がらせなのか、気付くのに時間はかからなかった。