「おーい! 海! お前どこの高校行くか決めたか?」
それは、中学3年の夏の終わり。
友達の問いかけに、俺 、明日実 海は答えられずにいた。
「んー、まだ決めてない」
「まだ迷ってんのかよ? この間の模試も良かったんだから、どこの高校でも行き放題だろ」
「行き放題ってなんだよ」
模試の結果も出て、担任からのお墨付きを、たった今もらってきたばかりの職員室前での会話だった。
「海は何でもそつなくこなして頭も良いからなー、なんの心配もなくていいよなー」
そう言いながら大きく溜め息をつくのは、家も近所の幼なじみで、勉強よりも愛してやまない野球を命がけでしてきた、夏木 寛太の言葉だった。
「寛太はスポーツ推薦で、どこの高校でも行き放題だろ?」
俺は嫌味ったらしく寛太に向かって言った。
「オレはー、海がどこの高校に行くのか聞きたいんだよ」
と、照れたように口にした言葉に、俺はぷぷっと笑った。