「文化祭のことでちょっと……」

私が話し終えると、「懐かしい!」とお兄ちゃんは笑う。お兄ちゃんの時は、知的障害を持った高校生とダンスを舞台で披露したそうだ。

「楽しかったなぁ……。みんなで振り付けを考えて、時間を作って練習したんだ。無事に終わった時、みんなで笑い合ったんだ」

お兄ちゃんは懐かしそうに思い出を振り返る。なるほど、そんなこともしてたんだ。

でも、いい案は夜になっても浮かばなかった。

夕食を食べ、お風呂から出るとお父さんが仕事から帰ってきていた。

「おかえりなさい」

私が声をかけると、「ただいま」とお父さんは微笑む。その手には本屋さんの袋があった。

「本屋に寄ったの?」

私が訊ねると、お父さんは「面白そうな本があってね」と一冊の本を袋から出す。そのタイトルを見て、私は目を見開いた。

「これって……」

「認知症の人たちがレストランの従業員として働く話だよ。ノンフィクションなんだ」