福祉を学び、私は特別養護老人ホームの職員となった。毎日目が回るような忙しさだけど、とてもやりがいを感じている。

福祉コースのみんなも、それぞれの道を歩んでいる。みんな、一生懸命に毎日を生きて誰かの役に立とうとしている。

チェリーは、私たちが文化祭で映画を撮影させてもらったグループホームに就職し、楽しく働いている。詩織たちも、それぞれの夢のために一生懸命勉強している。

お兄ちゃんは相変わらず施設で働いているんだけど、今度結婚することが決まり、お母さんたちは喜んでいる。そして、私もーーー。

「葵、荷物運んでいっていいか」

お兄ちゃんに訊かれ、私は「うん」と言った。私は今日、この家を出て一人暮らしを始める。

「……おばあちゃん」

私は、机の上に置かれた写真を見つめる。

私の就職先が決まった夜、ちょっとしたお祝いをした。その時に撮ったもの。私の隣でおばあちゃんが笑っている。

あの日以来、おばあちゃんが記憶を思い出すことはなかった。そして私の就職先が決まってしばらくした頃、肺炎で亡くなった。悲しくて何度も泣いたっけ。