体を包まれる感覚と同時に、ごろごろと階段を転げ落ちていく。


――どすっ。


鈍い音をたてて踊り場に着地した時には、目が回って、くらくらして。


……でも痛くない。


そこで、はっとして声を出した。


「朝比奈くん!!」


私を抱きかかえていた彼のそばで、飛び上がるように起きた。


そんな私に続いて朝比奈くんも目をシパシパさせながら、のんびりと起き上がる。


「大丈夫!?怪我は……っ?」



私を包むように落ちたんだから、大けがしてるかもしれない。


慌てて全身を確認していると、彼はすっとその場に立ち上がった。


そして自分の両手を眺めて


「……わたしたち、入れ替わってる?」



……じゃないから!



「朝比奈くんはこんなときにふざけないで!もう……ごめんなさい……!大丈夫?」


掴みかかる勢いで聞けば、


「落ち着いて。へーきだから。宮岡さんどこかぶつけてない?」


朝比奈くんの両手が私の頭を包んだ。


なんでこっちの心配するの……?


そしてケガを確認するかのように、頬を親指がすっと撫でていく。


どくんと心臓がはねて視線を斜め下に落っことす。


「私は平気だから……」


もう、無理。


朝比奈くんの胸を押して、距離をとり見上げた視界。


「宮岡さんが無事でよかった」


安心したーって、口の端を持ち上げてにこっと笑う朝比奈くんこそ、他人本位じゃん……。