教室の騒々しさも落ち着いて、朝比奈くんの隣の席に腰を下ろすと。
「宮岡さん」
いつもの調子で、彼は私を呼んだ。
「……なに?」
「もっと早く来て守ってあげればよかったよね。ごめんねー」
……相変わらず謝ってない。
それに問題はそこじゃないでしょ。
「……もう絶対、人前であんなことしないでください」
「あんなこと?」
「……さっきみたいに」
抱き着かれた映像が頭をよぎって、思わず言葉を止めると、
「……ふ」
そんな私の余裕なさを見透かしたように彼は笑う。
「……とにかく。さっきみたいなことはしないで……!」
文句っぽく吐き捨てるにしてもどこか決まらないのは、”抱き着かないで”とはっきり言えないほど、さっきのは恥ずかしい。
そして意地悪な朝比奈くんはそこを突くって、思ってたよ。
「”さっきみたいなこと”ってなんのこと?」
ほらね……!言うと思った!
「っ、わかってるでしょ」
「えー。……忘れちゃった」
白く並ぶ歯から覗く赤い舌。
……だからその可愛いの、ずるいんだってば。



