鞄を盾に、一歩、また一歩と後ずさりを繰り返しながら思った。 ……いちにのさんで逃げよう。 心の中で数を唱えて、思い切って踵を返した時。 ドンッとぶつかった先。「いて」の声。覚えのあるフレグランスの香り。 ……朝比奈くん!遅いよ! 「た、たす、たすけて」 思考なんて余地もなく、朝比奈くんにぶつかったまま彼の胸に鞄を押し付けて助けを乞う。 こんなに必死な私に、彼は。