僕を壊したのは君だから。

すっと伸びた指先が私の顎を軽くもちあげた。


琥珀色の目が、すぐそこ。



「……っ」


「嫌なことくらい、嫌って言えよ」



そうは言われても、こっちだって全部嫌なわけじゃない。


断るときは、確かに少ないかもしれないけど……それは……。


――っ、この緊張の中どうしたらそれを伝えられるんだろう。



だいたい、その親切なアドバイスはこんな距離感じゃないと言えないの?


朝比奈くんは私の動揺をおもちゃにして遊ぶ、最低なひとだ。



だから私は、絶対に内心を見抜かれないよう平静を装う。

「……わかった、から」



何とか口にするとすぐに朝比奈くんの指も視線も私から離れてくれて


無意識に止めていた息を全部吐きだした。




人の心臓をこんなに鳴らしていておいて、



朝比奈くんは他人事みたいに教卓に肘をつきながらぼんやりと天井を仰いでいる。



……もう、本当にマイペース。