ひどい言われよう。
だなんて……そんなことどうでもよくなるくらい驚いてる。
朝比奈くん、私のフルネームを知ってるんだ。
意に反して、心臓が徐々に速さを増していく。
「断っていじめられるのが怖いから屈してんの?」
「……っ、ひがう」
“ちがう”さえ、うまく言えないほど横に引き伸ばされた私の片頬が、ぺちっと解放された。
西日に煌めく黒髪。
気だるげな瞳と動揺の瞳がばちんと合って。
口の端を引き上げた彼は、いじわるに毒を吐く。
「……宮岡さんみたいな救いようのない馬鹿、俺みたことない」
……。余計なお世話だ。



