なにも返さない私の図星を見抜く朝比奈くん。


「懲りない人だねぇ」



呆れっぽい声が耳もとで聞こえて、思わず目を閉じた。


「……っ」


ふわっと鼻先をかすめる爽やかなフレグランスの香り。



距離を詰めたのは、単に私の握る黒板消しを抜き取るためだったらしい。



こういう紛らわしい態度も、策略なのかな。


朝比奈くんは奪いとった黒板消しで、あっという間に黒板を消して、静かに振り返った。



……な、なに。


そんなひんやりした目で見られることしてないと思うんだけど。




ーーパン、パン。



粉を払った手が私の頬に伸びて、あろうことか私の頬をつねりあげた。



「ニコニコしながら面倒ごとを引き受けちゃうような人っているんだね」



呆れ混じりの声と、離れない指先。



「……ね。宮岡 芙羽(みやおか ふう)っていう馬鹿の代表」