SIDE 朝比奈 岬


***


――アルコール分 5%


床に転がっていた空っぽの缶のラベルはそう言っていた。



「冷蔵庫に飲み物入れとくから、適当に飲もうぜ」と言ったのは紛れもなく島田だ。



「……島田、高校デビューかよ」


中3の頃はさ、修学旅行に缶酎ハイ持ってきた生徒のこと悪くいってたくせに。

俺なんか悲しいわ。



まぁ、そんな言い訳で、まさか宮岡さんの飲んでるものがジュースじゃなくて酒だなんて思うわけなかった。


俺が飲んでる方は健全なオレンジジュースだし……つーか、気づいたときには遅かったよね。



『私付き合いたいなんて微塵も思わないけど。……でも、近くにいたいって、いつも思ってる』


『朝比奈くんって存在は……恋愛だとかそんなちっぽけなもの簡単に凌駕するんだよ』


『朝比奈くんっていうのは……存在が、才能だから……』



『私、朝比奈くんになりたいってずっと思ってた』




頭の中でリアルに反芻するたび、心臓がバクバクなっている。



……なに、さっきの殺し文句シリーズ。



あれが、宮岡さんの本心っていうこと?


それとも酔っぱらったせいで過大表現しちゃった?



ベッドですやすやと寝ている宮岡さんをちらりと視界に入れる。



付き合いたいと思ってないけど、恋愛を越える。


……意味わかんないから。


ソレって、何……。


頭をガシガシと掻きながら、叫びたくなるような衝動をこらえる。


何も言い返せなくなった。


いつも適当な言葉がスラスラと出たのに。


宮岡さんかよってくらい赤面して、思考停止させられて。



……完全に立場逆転されちゃったじゃん。




鏡をみたら今の俺はたぶん、相当真っ赤な顔してるんだろうね。


そんなの見たくないから見ないけど。