僕を壊したのは君だから。

感情の読めない顔して、わたしの手を自分の襟元まで持っていく朝比奈くん。


「ちょ……ちょっと!」


「やり方わかんないわけないよね? 簡単に着れるんでしょ?」



握らされた浴衣の襟のそばに、朝比奈くんの無防備な肌が……。



くらっと、目の前が揺れるほど。
顔から火が噴き出そうなほど。


わたしの動揺っていうのは半端なものではなく。


汗ばんできた両手で、さっさと襟と襟を整えようと決意したその時。



「なんてね。嘘」


朝比奈くんはひょいっと自分で襟元をなおしてしまった。


それも、いとも簡単に。


なんとも美しく仕上がっている……。


……やられた。
また私は彼の思うままに遊ばれたんだ。


くっと奥歯を噛みしめながら、赤面でじろりと彼を見る。


艶っぽい浴衣姿で、べぇ、と赤い舌をちろりと見せる彼は、またわたしの体温を上げてきて。



「朝比奈くんは……わたしで遊ぶのが好きなんですか」


「好きっていうか、最近の趣味かな」


「……趣味」


「宮岡さんの趣味も俺でしょ?」


ぷにぷにと頬をつねられて、バシっと払い落とした。


「なわけないから!」


「ひっどー」


そう言って笑う彼は、いつもふざけていて。


ふと、思う。


わたしが例えば、「趣味はわたしでしょ?」なんて朝比奈くんに聞いたとして


「そんなわけないよ」と返されたら、それなりにショックだ。


でも。
彼からそういう気持ちは見受けられない。


それに気づいて、やけに寂しく感じた。