「……そ、そうなんだね。でも私には関係ないから……」
「うん。それでいいと思う」
廊下に靴音がふたつ響いている。
もうすぐで玄関につく。
玄関の方からは生徒たちのにぎやかな声が聞こえてくる。
「ちょっと待って。島田くん、」
足を止めて、彼の服を握って。
きょとんとした顔で振り返った島田くんを、見上げる。
「あの……――」
言いたいことはひとつ。
”朝比奈くんの彼女より大事なものって何?”
口を開いた瞬間、
「はいストップー」
——バシ、となにかに払われて、私の手が島田くんのシャツから離れた。
後ろから伸びた手の主を振り返ると。
少し不機嫌そうに眉根を寄せた朝比奈くんがいた。
「……っ」
思わずごくっと唾をのんだのは、彼の恰好のせい。
半渇きの黒髪に、なぜか体操着ではなく、ここの施設で借りたと思われる浴衣を着ているんだもん……。
「ねぇ、宮岡さん。この手が掴んでいいのは俺でしょ?」
……っていうかね、着方間違ってるよ。
胸元あいてるし、見てるだけでのぼせそう……。
顔を背けていたら、ぎゅっと手をにぎられて、
琥珀色の瞳があたしを捉える。
——どく、と心臓が鳴った。
「俺はこっち。間違えないでよ」
視界に入らないで……!!



