そんなとき。
「かっこいー。でも俺の仕事奪わないでよ?」
恐れるもの無しと、あえて空気を読まずマイペースに入ってくるのが、やっぱり朝比奈くんなんだ。
朝比奈くんの登場で安心したのか、男子の表情は少し緩んで。
香田さんも朝比奈くんの登場に、しっかりと口を閉じて、きまり悪そうに顔を背けている。
朝比奈くんは目を細めてとりなすように言った。
「ありがとね、砂月ちゃん」
……え?
いま砂月ちゃんって言ったよね……?
内心、どきりとした。
名前で呼ぶなんて、香田さんと親しいの?
「なんで岬がお礼いうのよ」
香田さんも朝比奈くんを下の名前で呼ぶんだ……。
「えーだって砂月ちゃんが宮岡さんを助けてくれたから」
「はぁ……?」
その声は、地響きのような低さであり、私の鼓膜しか震わせない特殊加工済みの音声だった。
——グサッ。
今のは、香田さんの鋭い視線が矢のように飛んできて私に突き刺さった音。
……やばい、これは、ぜったいにいけない展開。
ふたりの関係はわからないけど、少なくとも香田さんの好きな人って……間違いなく朝比奈くんだ。
そして私は香田さんの敵とみなされてる。きっと、そういう図だ。
ぶわっと汗が噴き出る。



