時計の針が重なる前に



「ねぇ、君かわいいねぇ。ひとり?よかったら、俺とお話ししようよ」


知らない男から話しかけられた。


しかも、口からは酒のにおいがプンプンしている。

飲みすぎで酔っぱらっているようだ。


「すみません。父のとこ…」

「えー?なんで、断るの?俺のこと知らないの?」

断ろうとする花梨の手首をつかみ顔を近づけてくる。


顔が近いがゆえにいっきに酒臭くなり顔が歪みそうなのを必死にこらえていた。


「あの、手をはなしてください。」


「案外、気強いんだ。結構好みだなぁ」

手を離そうとしない男に困り果てていた。


「彼女の手を離してくれませんか?」


よく知っている声が頭上からしたと思うと、すぐに手が男から解放された。