時計の針が重なる前に


「ゆっくりで、大丈夫ですよ」


冬哉のやさしい声で、花梨は少し深呼吸をしパニックの頭を整理した。


「あの、恥ずかしい話、男の人を下の名前で呼んだことがなくて……だから、どうしていいかわかんなくて…

でも、う、嬉しかったですし、もし、上崎さんがか、かまわないというのなら下の名前で呼びたいですし…」


花梨は自分で言ってて恥ずかしくなり、穴があれば入りたいと思った。

冬哉は花梨の言葉に頬が緩みそうになり、それを笑顔でなんとか隠した。

「じゃあ、名前で呼んでください」


花梨はこくこくと頷いた。

そして、車を下りた。

「夜一人は危険ですから気をつけてください。何かあればかけつけますよ」

冬哉は少し冗談めかして言った。


「あ、ありがとうございます。

と、冬哉さん…も帰り気をつけてください。」

突然の名前呼びに冬哉は面食らったような顔をした。

花梨からは暗いためよく見えないが、心なしか冬哉の顔が赤くなっているようにも見えた。


「では、失礼します。おやすみなさい」


そう言って冬哉は車をだした。


花梨は車を見送ったあと家にはいると、自分のベッドに飛び込んだ。
今日あったことを思い出しては興奮でベッドの上を転がっていた。


何かとは言えないが何かが自分の中に芽生えているのを感じていた。