時計の針が重なる前に


女性を瞬殺しそうな笑顔だった。花梨は自分の顔が赤くなっているのに気づき、パタパタと手で顔をあおいだ。

「先日、神宮寺さんの忘れ物を届けに来てましたよね?」

「え、あ、はい。パ…お父さん、昔からおっちょこちょいでよく忘れ物しては私が届けるんです。」

冬哉の問いにテンパりながらもなんとか答えた。

「しっかりしてるんですね。このまえ見たときこんなにも美しい人がいるのかと思ったら、神宮寺さんの娘さんとわかり納得しました」

この言葉にまたまた体の温度が急上昇した。

「そ、それはお世辞にもなってません…私が美しいとかそんなのないです…!」

慌てて言葉を返した。

「そんな、自分を下げないで、自信を持ってください。」

冬哉はそう言うとポケットから携帯をとりだして

「夜遅いのにひき止めてすみません。あと、いきなりすぎて、あの、ひかれるかもしれないですが、連絡先を聞いてもいいですか?」

さっきの優しく笑みを浮かべながらも余裕のあった態度がいきなり花梨の様子を伺いおずおずとした様子になった。

そんな冬哉を花梨はかわいいと思った。

「ええ、私のでよければ」

気づけばそう答えていた。