秋〜本もいいけど、俺のことも見て〜

「ただいま!」

あたしが玄関のドアを開けてそう言うと、秋斗がヒョイと顔を出す。

「おかえり。本、買えた?」

「うん!早速読むね」

ニコニコする秋斗にそう言い、ソファに座って読み始める。一ページ読み終えると、もうページをめくる手が止められない。次々に章を読んでいった。

レビュー通り、とても面白い本だ。主人公の切ない恋心が胸を締め付ける。笑いどころがあったり切なかったり、とても素敵な小説だ。

「あ!そうだ、次はあんな絵を描こうかな」

読書をしていたら、急にアイデアが浮かんできた。あたしは仕事用に使っているノートを広げる。そこにはたくさんの描きたいモチーフなどが書かれている。あたしはそこに思いついたことを次々に書いていった。

「モチーフ、決まったんだ」

秋斗がそう声をかけてくれるけど、それに答えている暇なんてない。ただひたすらアイデアを書き、読書を続ける。

「秋奈、コーヒー飲む?」

「夕食、どうしようか?」

「ねえ、秋奈……」