えっ!?マフラー?
背伸びして俺に巻いてくれた。
顔がグンと近い。
「ごめん、これだったらまだマシかな?と思って」
無地のえんじ色マフラー。
もしかしてこれ探しに部屋に戻ったとか?
「これ、姉貴の?」
「今年の誕プレ、マフラーにするからそれまではこれで我慢して?風邪ひいて寝込みたくないでしょ?もうすぐクリスマスもあるし」
「で、姉貴が使ってたやつなのかって聞いてんだけど?」
「う、うん……嫌?」
ジッとマフラーに目を落とす。
「いや、使う。サンキュー」
今、俺……ニヤけてないよな?
「良かった〜」とか言うなよ。
マジで嬉しいんだ。
やっぱやぎ座1位だな。
「おい、危ねえってば」
腕を引っ張り歩道側に寄せる。
本当危なっかしい。
「わー優しい!ヒロってモテるでしょ」
言っとくけどこんなのお前にしかしねぇしモテるわけねぇ!
自覚しろ、バカ。
駅に着くとホームにごった返す人。
5分、10分ズレただけで地獄の通勤ラッシュに見舞われる。
本当なら星座占い見なければもっと空いてる時間帯なんだけど、あまりにも楽しそうに見るからつい一緒に。
「おーい、祐翔!」
いつもの乗る場所にお馴染みのメンバー。
友達の純太、宏介。
隣に奈那が居ると決まってテンパってる。
いい加減慣れろよ。
「お、おおお姉さん…!おはようございます!」
「おはよう、純太くん、宏介くん」
無駄に笑顔見せなくていいから。
こいつらすぐ調子に乗るから。
寒いねーとか他愛もない会話した後。
「あ、友達見つけたから私行くね?」
ちょいちょい待てぇい…!
慌てて腕を掴む。
「この状態で!?」
「え?」
満員電車だぞ?
頼むから女だけで乗るな。
全然危機感ねぇ……
ハァ…と頭を抱える俺の気苦労わかってくれる?

