「買い物も終わったし、そろそろ帰ろっか?」
「あ……うん」
普通に接してくれて助かる。
妄想の中のリアルな奈那は大胆に絡めてきた。
それは俺が求めてることなのか……?
「ヒロ…?大丈夫?疲れちゃった?」って顔を覗いてくるから変に意識しちゃって挙動不審になる。
ダセぇ………
変わらず手を繋いでくれる奈那の優しさにまだ甘えていいのかな…?
帰り道はやけに肌恋しくなる。
ポッケの中で握りしめる手。
何も言わずに奈那も握り返してくれる。
他愛もない話を自然と振ってくれて、
本当に居心地が良い。
隣に並んで歩けることが俺にとっては一番の幸せなんだ。
例えそれが姉弟だとしても、こんなの……
出逢った時点で好きになるよ。
ひとつ屋根の下で暮らして、より近付いて……
好きになるなっていう方が難しい。
毎日バカみたいに意識して……
指先や肩が触れるたびにもっと好きになっていく。
俺……それを止める方法知らねぇんだよ。
さっきも妄想しちゃうくらい頭の中ヤバくなってる。
こんな形で恋人気分味わって……
疑似恋愛だってわかってるのに……
でも彼女になったらこんなふうに接してくれるんだってすげぇ新鮮で。
俺に向ける笑顔を独り占めしたくて
この手を引き寄せ抱きしめて……
「好きだ」って言いたくなる。
「ヒロ、誕生日の日も空けといてね?」
その瞳も……唇も……繋いでる手も…………
きっと困らせる。
また、あの顔をさせてしまうんだよな。
やっぱり、俺から離れなきゃ前に進めないんだろうか。
離れる……?
この手を振り解いて背を向けれる……?
「ヒロ…?」
この瞳に映らなくなる………
もう、名前も呼ばれることはないし
この声も聴くことはなくなる……

