触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜






「ちゃんとエスコートしてね?」




エスコートとかデート自体経験ないのにどうしろって言うんだよ。
うーん、うーんって自然と唸ってしまっていた。




「ヒロ…?自分がしたいように楽に考えたらいいんだよ?一緒に居るだけで楽しいでしょ?あれ?そう思うのは私だけ?」




「いや、それは俺も楽しい……ただデートって初めてだからダメなところがあれば教えてほしい…かな」




「え〜ないよ〜!今だって自然と車道側歩いてくれてるし」




「え?それはいつものことでしょ」




「ヒロはそういう隠れた優しさがあるから良いと思う」




リアクションに困ることサラッと言っちゃうのね、それもカップルデーだからかな。
いやぁ〜恐るべしカップルデー!!
俺、今日は夢にまで見た彼氏だ!!




電車の中でも壁側に立たせて守る。
座れるけど普段から奈那は座ろうとしないの知ってるから。
服にシワがいくのが嫌なのと本当に必要な人が座ればいいって真顔で言ってたの未だに覚えてる。




ヒソヒソと誰かが美男美女だと言ってるのが聞こえたらしく頬を赤らめてるのは正直直視出来ないくらい可愛い。
時々揺れてこっちに倒れそうになって恥ずかしそうに謝ってくる。




エスコート………




俺がしたいように………?




見降ろしたらもうすぐに顔があって至近距離で目が合う。
次の揺れが来たらするって決めた。
人差し指だけ絡めてた手を解き、腰から引き寄せる。




「奈那、こっち…」




聞こえたか聞こえないかの声でしか言えなかったけど、俺のコートに頭を預けてきた奈那は嬉しそうに言った。




「やっと名前で呼んでくれた…」




かなり……勇気いりました…………
心臓の音、きっとバレてる。
今日だけのカップルデーなら
一生分の勇気使い果たそうかな。