少しだけかがんで寄り添う。
綺麗なギターの音色。
「ギターソロ好きなんだ」
それは同感。
結局、一曲最後まで聴いてしみじみ。
帰ったら早速ダウンロードしようかな。
ていうかこの曲で話を逸らされた気が。
ヘッドホンから離れようとした時に隣からツンツンされて顔を横に向けた。
ヘッドホンの耳当て部分で周りには見えないよう隠しながら、桜井さんが踵を上げたのを感じた。
避けようがなかった。
ほんの一瞬、チュッと重なった唇。
触れたのは下唇あたり。
バッと離れて目を逸らす。
ヤバっ、目が泳ぐ。
再び視線が合って……
「えっ!?」って完全にテンパってる。
顔から湯気出てないか!?
熱すぎる…!!
「いいじゃん、キスくらい……もしかして初めてだった?」
とっさに腕で唇を隠す。
真っ赤になりながら頷いたら
「可愛い」と笑われた。
しかもこんな場所でいきなりとか。
「ヒロくんからのキスは付き合えた時までとっとくね?」
俺の言ったこと全然伝わってない…!
何で女子はキスとか平気で出来るんだよ…!
引きつけ起こしそうだ………
動揺してキャパオーバーで周りなんて全く見えてなかった。
だから気付くわけなかった。
この時、店の外から奈那に見られていたこと。
その奈那に気付いてわざと桜井さんが仕掛けたこと。
鈍感でバカな俺には未知の世界で、
触れた部分に頭がショート寸前だった。
その日の夜、奈那にはいつもよりきつめに保湿クリームを塗られ思いっきり頬をつねられるハメになるなんて。
あまりにもボーッとしてたからなのか。
「調子に乗るな!」って怒られるし。
まさか見られてたとは知らない俺にはさっぱりわけがわからず涙目になるだけだった。
奈那、俺………悪いことしちゃった。
バレたらどんな態度取るかな?
今みたいに叱ってくれる?
それとも見て見ないフリ?
キスくらいどうってことない?
奈那も、もう誰かとした……?
ファーストキス………じゃないのかな。
奈那とはマスク越しだったけど、あれはノーカンになる?
もしそうなら、俺のファーストキスは……
やっぱり強引にでもするべきだったか?
初めては、奈那が良かったよ。
そう思う俺はとことん最低だ……………

