番組が終わって声をかけても少し揺らしても案の定起きる気配なし。
親父も涼子さんも寝室で寝てる。
リビングに二人きり。
また抱きかかえて連れてくのか?
そっと膝まくらを外し寝顔を見つめた。
「姉貴……起きろって、風邪ひくぞ」
規則正しい寝息ってことはマジで寝てんのかよ。
自然と前髪に触れ頭をポンポンする。
堪らなくなって額をくっつけた。
目を閉じたら思うがままこぼれ落ちる言葉たち。
「奈那……起きなきゃ襲うぞ?」
なんてな。
首と腰に手を回して抱きかかえようとした瞬間。
バチッと開いた目が至近距離で合う。
びっくりして「わっ!」と思わず尻もちをついてしまう。
「うーん……何してんの?ヒロ」
「起きてんなら何か言えよ」
「ん?今起きたのに…あ、まさか部屋まで運んでくれるとこだった?惜しいことしたなぁ〜」
「バーカ、自分で帰れ!ハックション…!!」
「え?あ、コレ……ヒロのじゃん、かけてくれてたの?ありがと」
ぶっきらぼうに奈那の手から取り返す。
欠伸と背伸びしながらフラフラと立ち上がる奈那は階段へ向かう。
無言でテレビを消しリビングも消灯。
階段の灯りだけにして後を追うと、フラフラし過ぎて危なっかしい。
もしかして階段登りながら寝てる…?
足早に登り追いつこうとした手前で見事に足を絡ませ倒れかけた奈那の身体を支える。
引き寄せたから顔が近い。
フワッと漂うシャンプーの香り。
支えてる腕に柔らかい胸の感触。
なぁ、こんなことになっても俺は理性保たなきゃダメなのか?
何となく反抗期の弟を演じていればいいのか?
んなの無理だろ……
どさくさに紛れギュッと抱きしめる。
後ろじゃなく前に倒れて良かった。
「大丈夫?立てる?」

