「調子悪いの…?」
「そうじゃないけどもう一人にして」
シーン…としてお皿を置く音がした。
「ここ置いとくから食べてね」って受験生の母親かよ。
返事すらしなくてほったらかしにした。
朝になって捨てればいい………
そう思ってたのに。
もう開放してほしかったのに。
しばらくして部屋の外から「クシュン…!」とくしゃみの音。
布団を剥いで起き上がる。
え………!?
もしかしてずっと居る!?
まさかな………
いやいや、ないない。
でもずっと廊下に居たとしたら……
アイツ、部屋着は冬でも薄着……ていうかホットパンツの生足だぞ。
嗚呼…クソっ!
何ではっきり聞こえてしまうんだよ!
ドアを開けたらやっぱり居て、
カーディガンを羽織っていたけどロンT1枚といつものホットパンツにモコモコスリッパだけで座り込んでいた。
鼻水すすりながら俺の顔見た途端嬉しそうにするなよ。
「何してんの?ずっと居たの?」
バカ、受験生で風邪ひいちゃダメなのは奈那の方だろ?
そんな薄着でこんなとこに居たら…って思わず着ていたトレーナーを脱いで着せた。
「温っ…!ヒロが寒いじゃん…」
「ずっと居たんなら姉貴は大バカヤロウだ、もっと自分のこと大事にしろよ」
「ちゃんと食べないヒロが悪い」
「ほっといてくれって言ったろ?」
「ほっとけないってば」
ハイ…とおにぎりが2つ入ったお皿を渡される。
鼻の頭赤くして……寒い思いしやがって。
オーバーサイズの袖からようやく手を出した後。
「わかった、食べて寝るからもう部屋戻って暖かくして寝ろ」
戻ろうとしたらTシャツの裾を摘んでくる。
ヤバい………
これ振り向いたらあの上目遣いだ。
だから意地でも見ない。
「まだ何か用?」
摘んだまま動けなくする。
鼻すするとか泣いてんじゃないかって勘違いするからやめろ。
背中にヒシヒシと伝わる奈那の視線。
「ヒロ……そういうの、やめてほしい」
「そういうのって…?」
背を向けたままの会話。
もう見ないって決めたから。
早くドア閉めたい。