「初めまして、末永奈那です」




「え、末永…?お前、もう籍入れたのか?」




「あ…」と顔を見合わす2人。
そうだ、まだ誰にも言ってない事実。
どうしようか、この状況で説明する?
でもいずれ話さなきゃいけないことだしな。




「あの、彼女なんですけど…俺たち義理の姉弟で。親が再婚同士なんです」




立ち話する話題じゃないことは重々承知だが、びっくりされると思ったけど顔色ひとつ変えずに部長は理解してくれた。
同期も「こんな可愛いかったらそうなるわ」とかほざいてるけどスッと何か肩の荷が下りた気がした。




「あの、じゃあ私はこれで失礼します」




「夜勤明けにごめんね?」




看護師をしていると打ち明ければ益々目がハートになっている同期。
変な目で見るんじゃねぇよ。




「駐車場まで送るよ」




「え、いいよ、ここで」




「大事な資料忘れる俺が悪い、だからせめて送らせて?」




ほら、部長もそうしなさいって言ってくれてる。
2人と別れて駐車場まで送る。




「緊張した〜!何も考えずに来ちゃったけどこういう事も想定してなきゃね?」




俺が一番びっくりしてる。
まさか突然、上司と同期に紹介することになるなんて。
でもめちゃくちゃ誇らしい気分。
自慢出来る彼女だから。




車に乗り込む奈那。
助手席の方から見送るけどこの状況がもどかしい。
誰かに見られてるかも知れないし、ましてや会社だし。
シートベルトを締めたら窓を開けてくれた。




「帰ったらメールして?心配だから…」




「うん、わかった」




「本当、ありがとね?」




持って来てくれた封筒を見せる。
エンジンをかけたら最後にニッコリ微笑んでこう言うんだ。




「スーツ似合ってるよ?惚れ直した」




バイバイと手を振る奈那をこのまま行かせたくない。
合図して助手席のドアを開けた。
乗り込んできた俺にびっくりさせちゃったけど全然待てない。
帰るまで待てないよ。




封筒で隠すようにキスをした。
抑えきれなくて少々強引にしてしまってごめんね?
こんな場所で襲ってごめん。




唇が離れたら髪を撫でる。




「早く戻って……?バカ」




ハンドル握りながら照れてる横顔。
頑張ってねってその笑顔で何倍も頑張れる。




戻ったら戻ったで奈那の話で持ち切りだった。
当分弄られるな…コレ。
でも奈那のお陰で会議も無事終了したし、仕事もスムーズに運ぶ事が出来た。
段々と良い流れに乗ってきている。
最近、一段と楽しくなってきたんだ。




もう、そろそろなのかな……………