「タイミングが大事なんだから〜ママ急かしちゃダメ」
「はーい」
そうじゃない……そうじゃなくて………
「いや、言います…!」
「えっ!?」
顔を覆ったまま言ったら驚かれた。
今どんな表情してるのかわかんないけど緩みそうになるのを必死に耐えながら目を見せる。
「俺なりに…ちゃんとした場所で指輪用意してプロポーズ出来るようになったら…とか固定概念みたいなものがあったかもです。でも親父の立場で考えたら…そうっすよね、隠されるの好きじゃないし、バレてから言うのとバレる前に言うのとじゃ全然ニュアンスも違ってくるし…」
気付かせてくれてありがとうございます、と頭を下げた。
自分でいっぱいいっぱいだった。
親父の考えとかまで頭回らなかったの見越されてたんだな。
「ううん、私が変なこと言っちゃったからタイミング逃してたよね」
「そうじゃないです…!むしろ、自分自身の気持ちの問題というか…」
覚悟、足りてなかったのかな。
どのみち避けては通れない道なのに、俺のタイミングで良いなんて逃げ道にしてたのかも。
情けない…!!
隣に座る奈那に目を向ける。
「今日、言う…!」
力強く言ったのに優しい眼差し。
何もかも包み込んでくれる感じ。
ダメだ、またフニャっとなる。
その場で親父にメールする。
“今日、帰って来たら大事な話がある”
と打って2人に見せた。
送信っと。
「え、無理してない?これからタイミングなんていくらでも…」
そう言ってくれる奈那に対して首を振る。
親父に認められたい気持ちもあるけど、俺にとってもう一つ躊躇というか……勇気出せずにいたことがあって。
あ、ダメだ……考えただけでまた顔が赤くなる。
「ちゃんと言うよ…?でも……」
視線を重ねたまま言葉を詰まらせたら……
「ほら、まだタイミングじゃないんだよ…」
「そうじゃなくて…!俺、親父の前で初めて奈那に対する気持ち言うから…」
「なーに?今更恥ずかしいとか?」って涼子さんに笑われる。
でも奈那は何かを感じとってくれていて真っ直ぐ俺だけを見てくれていた。
自然と髪に手がいく。
「奈那のこと……好きだって言ったら歯止め効かなくなりそう」
「え……?」って顔がみるみる真っ赤になる。
ハッとして髪を撫でた手を退けた。
ヤバっ……涼子さんの前だった。
だって奈那の真っ直ぐな瞳に捕まったら
いつもこうなっちゃうんだもん。
「見せつけてくれるね〜若い若い」
「す、すみません…」
2人して真っ赤になりながら謝る俺と横向いちゃう奈那。
照れてるって涼子さんに言われて顔伏せちゃった。
「ちょ、今マジ無理…」とか言って本気で照れてる姿は可愛い。
「親父に熱く語っちゃっても引かないでね…?」
そんな奈那に今は何を言ってもこっち向いてくれないだろうね。
うん、うん……とただ頷くだけ。
よし、ついにこの時が来た…!!