寮まで送った後。
駅までの道のりで大学生らしきグループとすれ違った。
「あ〜マジで末永奈那ちゃんとデートしたい」って声が聞こえてきて思わず振り向いた。
完全に年上で大人な雰囲気。
でも中身はチャラ男っぽい。
名前知ってるってことは同じ大学だよな。
「俺、秒で断られたわ」
「俺も」
「彼氏居るっぽいよな」
「誰だよ、俺の奈那ちゃん射止めた奴」
「羨ましすぎんだろ」
こんな噂されるまで一目置かれてる。
やっぱ可愛いから?
どう見ても先輩らしき人たちからもモテてるんだ。
高校時代も学年とか関係なかったもんな。
となると……ヤバ過ぎないか!?
俺、やっぱ安心してる場合じゃないかも。
どれだけ奈那が俺を見ていてくれても周りが黙ってない。
こうして知らないところで男が騒いじゃうほど。
大学ってどんなところなの!?
講義がない時はどうしてるの!?
構内歩いてるだけで声がかかっちゃうんじゃないの!?
看護科は特別コースだって聞いてるけど他の科とどれくらい差があるんだろう。
少なくともさっきの人らは完全に声かけていて断れてるわけだよな。
奈那……そういう話一切してくれないから。
女子ばっかだよって言ってたけどそうじゃない時はやっぱりモテてんじゃん。
ていうか、わかってた展開だろ。
想定内だよ。
クソっ……何で女子大じゃねぇの?
今更だけど。
“俺の奈那ちゃん”だぁ?ムカつく…!!
陰でそう呼ばれてんのかよ。
ガキっぽいって思われてもいい。
おもむろに携帯を取り出してかけた。
__ヒロ?駅着いたの?
すぐに出てくれる愛しい声。
あの連中に聞こえるようなデカい声で少し距離を縮めながら。
__奈那…!来週の大学祭さ、楽しみにしてる。
__うん、私も楽しみだよ。
俺が奈那って言った瞬間、奴らは振り向いた。
__あのさ、渡し忘れたものがあるんだけどもう1回だけ会えない?
__え…?うん、いいよ。
__じゃあ今すぐ寮に戻るね?
チラチラとこっちを見ながら
「奈那って言ったよな?」って仲間に確認してる。
そうだよ、あんたらに断り入れた末永奈那のこと言ったの。
真ん前を通り過ぎ寮に向かう。

