「ちょっと、どんなアイテム使ったの?教えてよ」
「は?ヤダし」
「え、何でよ?わかった、アイス奢ってあげるよ」
「ガキじゃねーんだから自分でクリアしろよ」
「チェ、ヒロのケーチ」
「姉貴がヘタなだけだろ」
もう自然と「姉貴」と呼べるようになった。
最初は「おい」とか「なぁ」だったのをまたあの可愛い顔して「お姉ちゃんでしょ?」なんて言いやがって。
意識してんのは俺だけかよ。
当時中1からしたら中3なんて結構歳上に思うけど俺は最初から一人の女としか思えなかった。
学年の中でもとびきり美人だし目立つ。
「お前あんな美人な姉ちゃん出来て羨ましいわ」って色んなやつに言われたけど俺にとっては戸籍上他人なお前らが羨ましかったよ。
どうとでも恋愛出来るじゃんか。
堂々と告白だって出来る。
一緒に住んでる身としては、
「好き」すら言えなくて適度な距離を持たなきゃならねぇ。
万が一勇気を出して伝えてもフラレるのがオチ。
フラレても毎日顔合わすんだぜ。
これ地獄だろ?
真剣な顔して
「え、気持ち悪い、無理」とか言われたら二度と這い上がれねぇかも。
だから絶対に距離を取る。
適度な距離で姉弟を演じる。
でもたまにやっぱり目で追ってしまうんだ。
ソファーに座る後ろ姿。
テレビを見てる何気ない姿に勝手に胸を締め付けられてバカみてぇ。
我に返って部屋に戻ろうとしたのに。
俺の鼓膜は奈那の声を必ず拾う。
「あ、ヒロ!ヒロの好きな番組やってるよ〜!」ってその笑顔反則だろ。
ちょっと離れた場所に居たのにわざわざこっちまで来て手を取る。
ソファーに隣同士で座ってくるから焦る。
「いいじゃん、一緒に見よう?」
そんな可愛い顔で言われたら断る理由が見当たらない。
「お、おう」とか歯切れ悪い返事しちゃうんだよな。
こっちの気も知らないで……

