「今、帰りか…?」




「う、うん…」




暗くて表情が読み取りにくい。
親父が……何を言おうとしてるのか。
この手を離したのは俺でもなく奈那だった。



「久々にこの公園行きたくなって……聡志パパも今帰り?」




「ああ。じゃ、一緒に帰ろうか」




「うん」




え……このまま帰っちゃうの!?
スルーしちゃうのか!?
何事もなかったかのように「大阪楽しんだ?」とか奈那と話してる。
距離詰めてる段階で見えてたはずだ。
俺の方からキスしてたとこ。




「祐翔、ちゃんとボディーガード出来てたのか?」




「えっ!?あ、うん…」




「あ、お土産いっぱい買って来たよ〜」




「それは楽しみだな」




会話は……いつも通りだ。
違和感あるとすればしどろもどろな俺だけ。
このまま、突っ込まれない限り言わない方向でいいんだよな…?
チラッと奈那と目が合って頷かれた。
うん、きっとそうだ。




親父は、見て見ぬフリをしてくれたんだよな…?
何の為に…!?
まさかこの2人が…なんて思ってる?
でも血は繫がってないんだ。
可能性は充分あるだろ…?
1ミリも疑わないなんてことはないよな?




前を歩く親父の背中が何を思っているのか全く検討もつかない。
もし俺たちがカミングアウトすれば、やっぱり反対するのだろうか…?
世間体を気にする…?
周りから好奇な目で見られるのを恐れる…?




なぁ、俺たち……別れさせられる?




家に着いて玄関前。
ふと立ち止まった親父が振り向いて俺たちに言った。




「ちょっと…俺と涼子から2人に大事な話があるから少し時間をくれるか?」




俺たちは即座に強張った。
やっぱり見られてた。
涼子さん入れての話し合いなんだきっと。
もしもの時の為に言うべきことは夫婦の間ですでに決まっていたのかも知れない。




「わかった」と返事をしたのは奈那。
もう腹括ってる…?




「おかえりー」と笑顔で迎えてくれた涼子さん。
親父とはアイコンタクトで奥へと消えていった。
手洗いをしながらどう出るべきかをない頭なりに考えている。




そんな不安げな俺を見て「大丈夫だよ」って奈那は言ってくれる。
小声で会話。