深呼吸して再び顔を上げる。
「末永奈那さん」
「アハハ、急に何?」
「ちゃんと言えてなくてごめん、奈那はいつも言葉にして伝えてくれてたのに俺は同調してるだけだった」
その瞳に映るだけでドキドキして、
その笑顔に触れるたびに舞い上がっていた。
キスするたびいつもキャパオーバーして自分を抑えきれずにいた。
伝える場面はいくらでもあったのに。
「俺は奈那が好きです」
その気持ちは何度か言えたはず。
「知ってる」って言ってくれてるし。
もう抱きしめたくて仕方ないんだけど。
右手を前に出して思いの丈を叫ぶ。
「だから、俺と付き合ってください!」
柔らかい手が包み込んでくれる。
「え、もう付き合ってたんじゃないの…?私だけ勘違いしてたの!?」
「いや、そうじゃなくてちゃんと言いたかったんだ…!アイツらに先越されたけど」
「え…?付き合ってるけどもう1回告白…的なこと!?」
「回りくどくてごめんなさい…好きは言えたけど舞い上がってて…ちゃんとしたこと言えてなかったから」
「そうか、純太くんたち見て焦ったのか」
「はい……お恥ずかしい限りです」
「そんなの気にしてくれたんだ…?可愛いねぇ…」
何も言えねぇ……
触れてた手、ギュッと握り返してくれる。
「順番逆になったけど、答えはイエスだよ。私こそ宜しくお願いします」
ちょっと泣きそうになってる奈那を思わず抱きしめてキスをした。
大好きだよ……
「ていうか何回もHしてて今更…!?」
「だよね…」
腕の中で笑い合ってまた唇を重ねた。
ジャリ…と音がして自然と目を向ける2人。
近くまで来た人影。
一瞬で固まった。
「お前たち……何やってるんだ?」
目の前まで来てはっきりとわかった。
いつから…?
いつから見られてた…?
それは怒ってる顔でもなくて
ただただ驚いた顔。
くたびれたスーツ姿で立ち尽くしてる。
ちょうど仕事を終えて帰って来たところだろうか。
「親父………」
突然の鉢合わせでなす術がなかった。
俺……何してた?
少しずつ離れる身体。
キスしてたの……見られたよな……?
俺は………どうすればいい………?
どうするべきなんだ……?
繋いでるこの手を離すべきなのか…………