「いい?絶対にバレないようにね!?」
「わかってるよ姉貴、しつこい」
卒業旅行前日、親の前で演技も抜かりない。
旅費節約の為に夜行バスで大阪に向かう。
「気をつけてね?楽しんでらっしゃい」
「はーい、行ってきます!!」
今日から3日間、奈那と一緒だ。
バスの座席は周りの計らいもあって隣同士にしてもらえた。
純太たちは離れて後ろの方。
俺たちの前の座席にチカさん、マキさん。
手を繋いで眠る俺たちをこっそり前から写真撮られてるなんて全然気付かないまま夜は更けてった。
修学旅行とか勿論別々だし2人で高校生らしいこと全く出来なかったから嬉しい。
同級生だったらこんな感じなんだな。
朝方、バレないよう奈那がキスで起こしてくれる。
思わずキョロキョロしちゃったけど人差し指でシーッとされて静かにする。
良かった、皆まだ寝てる。
バスの運転手も見えにくい位置だし、今は2人だけ起きてる…?
何度も小さなキスをした。
恥ずかしそうに微笑む奈那が可愛くて抱き寄せる。
少し曇った窓ガラス。
景色を見ようと手で拭う。
高速を走りながら前方から朝日が登って明るくなっていく。
「綺麗……」
小さくそう言う奈那の横顔。
ていうか、俺にとって奈那は朝日以上です。
身を乗り出して一緒に眺めた景色。
途中で目が合って手が重なる。
言葉はなくても惹かれていく。
徐々に深くなるけど前の座席が動く気配がしてバッと離れた。
お互いの動きが可笑しくて笑い合う。
繋いでる手はブランケットで隠してる。
急に携帯を向けてくるからびっくりしたけどインカメで何枚か撮られた。
ツーショットだし猫耳やコアラ顔になったりして、ヤベぇ…可愛い過ぎる。
いざ、USJへ……!!
本当にここからは遠慮して別行動するつもりだった。
一緒に来てもらった純太たちにも悪いし。
「思いっきり楽しんでね」ってお互い言い合って入場ゲートで別れた。
「うわぁ…!スゲー!やっぱ最初はスパイダーマンかぁ!?」
「いや、混むの見越してハリポタだろ」
「俺、ジョーズ行きたい」

