だからどこまで声かけられてんだよ。
俺が居るの見えてねぇのか?
いくらでも言ってやるよ、俺が彼氏なんだってな!!
ホームにあがる直前で手を離した。
何も言わずに隣に立ってくれる。
俺のなのに……今は抱き寄せれなくてもどかしい。
他の高校と下校時間被っちゃって車内もうじゃうじゃ。
やっぱり視線は感じる。
“卒業式だったんだ…”
“あそこエスカレーター式だろ?”
“じゃあまた通学時間会えるかな”
“制服見納めじゃね?”
“隣の男邪魔…見えねぇよ”
どこかしら聞こえてくる会話にイライラしていた。
「さっきの……」
突然、奈那から話しかけられてびっくり。
車内で目が合うだけでまだドキドキする。
「え……?」
「格好良かった……」
え、それ今言う…!?
こんな混んでる車内で!?
は、恥ずかしい……
「う、うん……」
「ハハ、顔真っ赤」
あ……これ、きっとまた俺を弄んじゃうパターンだ。
少し距離があったのにブレザーに手をかけ引き寄せてくる。
目の前まで近付いちゃって息がかかりそう。
ちょっと待って……これ、すっごく恥ずかしい。
荷物は足の間に挟んでるけど揺れるたびに奈那の前髪に触れる。
何か……抱きしめてるみたいだ。
「ヒロ……」
「ん?」
呼ばれて向いたら思った以上に顔が近い…!
心臓が波打つ。
キスしそうになって思わず顔を上げた。
あっぶねぇ…!
人…わんさか居んぞ。
それでなくても俺ら目立ってるのに。
ギュッてブレザー掴んでますけどどうかした…?
目線だけで確認したらこっち見て笑ってる。
もしかしてこの状況楽しんでる…!?
そうか、俺…今弄ばれてる最中だった。
頭だけこっちに預けてきて「疲れた…」と呟く。
嗚呼……やっぱり抱きつくパターンだ。
ちょっと待ってよ、これ、同じ学校の奴らも居るんじゃないの!?
私卒業したし知ーらない、とか思ってそう。
ヤバ……心臓に耳当てないで。
ドキドキが伝わっちゃう…!!
顔上げるな〜!
ネクタイ引っ張るなって。
「ヒロの第2ボタン…誰にもあげないでね?」
えっ……!?
うわっ、今絶対皆に見られてる…!!
絶対聞かれた!!
今のは最強の落とし文句だろっ…!!
クスクス笑ってるし…!小悪魔っ!!

