後に2人きりになった途端。
隣に座る奈那から小指絡めてきた。
この不意打ちってやつが堪んないくらい好き。
「大胆過ぎ……ついてくるとか」
「ごめん……」
ヤベ……やっぱり怒ってるよね。
シスコンこじらせ過ぎた。
足を組んで座る時は大体怒ってる時…!
でも小指は絡んだまま。
ど、どういう状況でしょうか…!?
「ホテル……決めた?」
「えっ…?あ、いや……まだ」
バチッと目が合う。
あれ?顔赤い…!?
あからさまにツンとしてる態度で携帯を見せてきた。
あ……ホテル予約画面。
「リストアップしてくれたんだ?ありがとう」
「じゃなくて……」
「ん…?」
洗車してる親父と庭で洗濯物を干してる涼子さんを気にしながらリビングでテレビを見てるフリの俺たち。
聞こえないようにボソッと呟く。
「ここの客室空いてるから」
「ホントだ」
「それ6階、私たちは10階だから」
「え?いいの?ホテルも別々だって…」
自然と小声になる。
ハァ〜とため息ついて前髪を掴んだ奈那が一瞬であの瞳をしたから射抜かれた。
「建前はね……本音は違うのわかってるでしょ?」
小指だけじゃ満足出来ず思わず手を握りしめた。
窓が開いて涼子さんがカゴを持ったまま入って来る。
すぐさま手を離したけどテレビじゃなく壁に視線を向けてしまったから不自然に思われたかな。
ヤバい……ドキドキが止まらない。
同じホテルに泊まるとか夢に見たシチュエーションじゃねぇか。
部屋は違えど夜中落ち合ったり……?
顔がニヤける…!
早速予約を完了して携帯を返した。
画面確認後また目が合ってニヤニヤ。
クッション顔に投げられても全然平気。
しまいには指で頭押されて「浮かれすぎ」とか言って部屋に戻っちゃった。
フフン、いいもーん!
だから俺、バイト始めました…!
平日2日と土日祝はフルで。
「いらっしゃいませ!」と笑顔でファストフードのレジもするし製造もするし。
旅行の為なら何だって楽しいぜっ!!
「いらっしゃいませ!…あ、奈那」
バイトしてるって言ったら来てくれた。
あと30分であがりだからそれ見越して会いに来てくれるとかめっちゃ嬉しいんだけど?
飲み物だけ注文して「待ってるね」って何か彼女っぽい。

