さっさと帰らせた後。
微妙に空気が違う。
意識してるからか?
一緒に片付けしながら会話はない。
奈那がお皿を洗って、俺が拭いて直していく。




「コーヒー飲む?」って聞いたら
「先にお風呂入って寝るね」だとさ。
ほら、こんなんになるなら距離詰めなきゃ良かった。
欲張ったらこうなるんだよな。
お互い変に意識して、奈那は遠ざかろうとする。




まだ18時半なのに寝るって……
部屋に閉じこもるってことだな。




「勉強、あいつらにも教えてくれてありがとう…!」




去り際にちゃんと言えた。
振り返ってくれたからびっくりしたけど目を合わせてくれたことに胸が一杯になる。




「次はヒロの番ね?みっちり教えるから」




悪戯っぽく笑うのとか反則だろ。
どんどん貪欲になって終始つかなくなるから
思わず手を取ってしまう。




「今じゃダメ?姉貴の時間、俺にちょうだい」




困らせてしまうのは百も承知なんだ。
目に見えてわかる境界線なんて引かないでほしい。
振り絞った勇気、無駄にしたくない。
真っすぐ届いて…!!




「ヤダ……」




笑ったと思えば今にも泣きそうな瞳。
それ、ズルいよ………何も言えなくなる。




「今日はヤダ……ごめん」




俯くから自然と手は離れた。
またこの感じか。
状況を履き違えるたびに消えてしまいたくなる。




「わかった……」って何ひとつわかってないのにわかったフリをしなくちゃならない。
また俺一人で舞い上がって見事に散るってやつだな。
カッコ悪………




いつになったら報われんだ?




それとも一生報われないか?




俺の言う「好き」はきっと、奈那の気持ちとは交わらないんだろうな。
だったらいっそ、普段の態度にも示してくれりゃいいのに。




あんなに思わせぶりなことしてくんだもんなぁ……




嫌いになれないのが一番苦しい。




困った顔見るたびに何やってんだって自分を責めるけど、やっぱり好きな気持ちは減らなくて募ってく。




ここから俺、全然動けないよ………