「よし、行くぞ」と席を立つ。
慌てて奈那も後に続く。
「行ってきます」と玄関を出たらすぐに誰にも見えない死角でのキス。
いつもよりギュッと抱きしめちゃう。




「これもあと少しだね…」




「うん……そうだ、奈那?試験終わったらまたデートしよう?」




「うん、いいよ」




「あっ、あと……もう1回」




行こうとするのを止めて再び顔を近付けた。
仕方ないな…といった感じの微笑み。
どんなワガママも受け入れてくれる。
短いけど深いキス。




だってまた今日からハラハラドキドキして独占欲に駆り立てられるだろうから。




キミはやっぱりかなりモテる。
いっそ、俺が彼氏だって堂々と言えたなら。
堂々と手を繋いで歩けたら。
駅のホームでイチャついたり出来たなら。




他校の男らからの視線も痛いほど感じてるわけで。
こりゃ1人で歩かせたら絶対声かけられるパターンだな。
俺らが姉弟だと知らない奴らの前では思いきり恋人感出してやる。
“姉貴”なんて言うもんか。




ジロジロ見てくんな。
人混みに巻き込まれないよう壁側に奈那を寄せる。
俺が盾になってやる。
そんなの気付かずに他愛もない話してくる奈那が可愛いんだけど。




電車待ってる間にブルブル震えるから肩を抱いて擦る。




「え?ヒロ……いいよ」って遠慮気味。
恥ずかしいの?
誰に見られてるかわからないから?




「俺が盾になってるから見えてないよ」




「だ、大丈夫だよ……もう寒くないから」




「本当…?」




「うん」




もうすでに独占欲に駆り立てられちゃってる俺は大胆に出ちゃうけど…?




両手で奈那の頬を包み込んだら真っ赤な顔が見れた。




「ほっぺめちゃくちゃ冷たいよ…?」




わかってる。
こんなの困らせるだけだって。
あと少し…とか言うから見せつけたくなる。
前後にも人はたくさん並んでるのに。




「ん〜!大丈夫だってば…」




照れた顔もヤバいって知らないでしょ。
それ、煽ってるだけだって教えてあげないと。
あ、下向いちゃった。
怒らせちゃったかな…?