触りたい、縛りたい、愛したい  〜例え許されない恋だとしても〜




「そうだよ、姉と弟じゃ堂々と出来ねぇし、ここは心機一転違う人とちゃんと向き合って恋してみてもいいんじゃね?」




「………無理」




「はぁ、お前なぁ…」




パタン!と参考書を閉じた宏介がここで初めて会話に入ってくる。




「好きなんだろ?奈那さんのこと……だったらそれでいいんじゃね?無理して他の人好きになろうとか相手にも失礼だし、第一奈那さん越えとか無理ゲーだろ?祐翔には」




な、なんと………今日一冷静な判断。
ごもっともだぜ、宏介。
鼻歌交じりに料理してる奈那の姿を見ながら、恥ずかしくも自分の気持ちに改めて気付かされる結果となった。




「ヒロ〜ちょっといい?」




呼ばれたから行くけど、俺……
今顔真っ赤じゃね?
ダサいくらい意識しちゃってんだけど?




「ん?」




「はい、味見」




スプーンに味付けしたミンチ。
奈那からのハイ、あーん………
死ぬほど嬉しいけど、
このタイミング、死ぬほど恥ずかしいやつだ。
絶対あいつらも見てる。
でも、奈那がご飯作ってくれる時は
いつもこうやって味見させてくれる。




ええぃ!いつも通りの俺にならなきゃ!
パクっと食べた。
いつも以上に美味しく感じる。




「美味っ…!!」




「そ?良かった〜」




そしていつもこの笑顔にキュンときてたんだ。
ちょっと服の袖を摘んで奈那だけに聞こえる声で話しかける。




「ねぇ、本当にあいつらも食べるの?俺が全部食べたいのに」




「ヒロにはいつでも作ってあげるじゃん」




「それはそうだけどさぁ……」




「大勢居た方がご飯って楽しいよ?ほら、お皿並べて?」




「ちぇ、二人きりが良かったのにな…」




奈那の前ではクールぶってもすぐボロが出る。
こればかりは仕方ない。
ちゃんと伝えなきゃ気付いてもらえないって嫌ほど感じたから。
奈那の中ではやっぱ俺はどこまでも弟でそれ以上になることはない。