毎年毎年同じ光景。
「あ〜もうダメだ〜!」と親父が酒に潰れる。
涼子さんもそこそこ飲んでるから俺がいつも寝室まで運ぶ。
お水を飲ませて脈を測るのはさすが看護師だなって思う。
「祐翔くん、ありがとうね?後は任せて」
「はい、宜しくお願いします…」
ったく、飲み過ぎだっつーの。
涼子さん居るからってハメはずし過ぎ。
“好きな人と飲む酒は一段と美味いんだ”って前に聞いたことあるけど。
“甘えてくれるのは嬉しいし幸せなことなの”と涼子さんも言ってた。
息子に運ばせるのは考えものだけどな。
「じゃ、私も寝るね、おやすみ〜」
涼子さんに聞こえるよう言うとこっちも目を配らせたように感じた。
怖くて見れなかったけど小さく「おやすみ」と呟く。
階段を登る足音。
何故か胸がギュッとなる。
今なら絶好のチャンスなのに……?
散々逃げ回るから嫌気が差したのかも。
ここで話しても涼子さんたちに聞こえるからかな。
明日は……普通に接してくれるだろうか。
ハハハ……自分から避けておいて都合良いよな。
俺はどこまでガキなんだ。
こんなの呆れられて当然。
そのうち乗り換えられるんだ。
今の俺には何の強みもねぇ。
ただのお荷物だ。
すぐに部屋に戻るのは気が引ける。
テレビも見る気しないし。
あ……携帯も部屋に置きっぱだ。
奈那からのLINEは未読スルーのまま。
3件だけきてたけどまだ読めない。
大きなため息ひとつ。
立ち上がりお風呂に入ることにした。
何をしても頭の中は奈那のことばかりなのに……
考えれば考えるほど泣けてくる……
俺、本当に奈那から離れられるのか……?
さよなら出来る……?
毎日顔合わすのに……?
進学すれば離れるけど、このまま本当に終わりなのかな……?
もうこの手で触れることも出来ない……?
確かに触れ合ったんだ……
俺は奈那を抱いた……
愛し合えたと思っていたのは俺だけ……?
1人で舞い上がってた……
奈那を目の前にして胸がいっぱいになって……
全く違うこと感じてたのかな。
そんなの嫌だ………
“ヒロが好き…”って言ってくれたじゃんか……
2人の想いが重なって隠しきれなくなって……
同じ理由で溢れたんだと思った。
ずっとずっと……ずっと好きだったんだ。
温かい湯船に涙が落ちていく。
顔を洗って掻き消した。
触れたい………
抱きしめたい………
苦しい………
奈那が俺を見てくれないのがこんなに怖い………
離れていかないで………

