チラッと奈那を見たら仕方ないよね、って顔。
まだ親父らには言わないでおこうって話だから。
桜井さんも奈那とはアイコンタクトだ。
姉弟の壁って……相当厄介だな。
こんな時、何も出来ないなんて歯痒くて無力を叩きつけられる感じ。
目を逸らすしかない俺にさらなる追い打ちがかかる。
背後から奈那の腕を引っ張る男の影。
「奈那っ…!?」
俺以外に奈那を名前で呼ぶ人は初めてだった。
振り返った奈那がどんな顔をしていたのかはここからは見えない。
ただ驚いた声で「秋田先輩…」とだけ聞こえた。
確かに見た目は俺らより年上に見える。
奈那が呼ぶ先輩って……
“中学の先輩だった人…好奇心で一度だけ…”
脳裏に蘇った奈那のセリフ。
ピンときた。
絶対に初めての相手だ。
「少し話せる?久しぶりだし、話したい」
ムカつくくらいスマートで
ムカつくくらいイケメンで
ムカつくくらいストレートに誘ってる。
俺なんか3年かかったのに。
「あ…ごめん、家族で来てて」
奈那が断ろうとしてホッとしたのも束の間。
「久しぶりなんでしょ?行って来なよ」って涼子さーーーん!!!
ペコリと頭を下げながらこの男、涼子さんにも「お久しぶりです」と挨拶しやがった。
何だよ、昔から知ってます的な態度。
元カレ感出しまくってんじゃねぇよ…!
ていうか何でここに居るんだよ…!
まさか奈那に会いたくてわざわざ来たとか…!?
話って何だよ!
やり直したいとかなら無理だからな!!
困った表情の奈那。
「私たちも参拝したらそのまま帰るわね?あなたたちはゆっくりしてらっしゃい」
え、ここで解散!?
親父も涼子さんに奈那の方を見て「いいの?」って聞いてる。
耳打ちして何となく理解したっぽいけど何て言ったんだろう?
この男のこと、涼子さんはよく知ってるみたいだ。
奈那……行くの!?
再びこっちを見て目が合った。
気まずそうな雰囲気だけど
「ちょっとだけ話してくるね」って行ってしまう…!
嫌だ、行くなよ…!

