「好きだよって言ってくれたら頑張れるかも」
「えっ…?」
「照れずに、俺だけを見て……」
こんな無茶ぶり、応えてくれるかな?
相手にされなかったらどうしよう。
また呆れさせちゃうかな。
「そんなんでやる気出るんなら早く言ってよね…」
「えっ!?言ってくれるの!?」
片方だけ耳に髪をかける仕草。
ゆっくり顔が近付いてきて………
えっ…!?まさかキスも…!?デヘヘ♡
わわ、両手で手も握られちゃってる…!!
「ヒロが好きなの……」
こんな至近距離で言われたらアウトだ。
伏し目がちな視線は唇を見てるの……?
嗚呼もう…抱きしめたい。
キスしたい。
寸前で止まる奈那と目を合わせる。
「ここから続きは終わってからね?」
そうでした………
俺と違って奈那はちゃんと区別出来てる。
脱線していく俺を元のレールに戻してくれるんだよな。
「本当、よく出来た彼女だね」
「それはどうも」
「ねぇ、数学ってめちゃくちゃ頭使うから終わった後は覚悟しててね?」
「うん、期待してる」
わお………期待されちゃった。
奈那も笑顔でサラッとそういうこと言うんだ?
よーし!!頑張るぞ!!
お昼をまたいでも集中力は途切れることはなかった。
奈那は途中でお昼ご飯作ってくれて、食べながらでも問題を解き続けた。
「もう!何だよ、チェバの定理って!」
「ハハハ、三角形の外部で交わるやつね〜どこから当てはめたらいいかよくわかんなくなるよね」
奈那は自分なりに独自のやり方で頭に入れてるらしいから、よく「私の解釈だとね……こうなるから先生はこう教えてたんだと思うよ」って言う。
それがドンピシャでわかりやすいから、もうマジで専属家庭教師だ。
気付いたらもう夕方…!!
終わる気しない……
「ちょっと休憩しよっか?あまり根詰め過ぎると良くないよ」
「いや、やる…!」
「そう?でも適度に休憩してね」
こんなにプリントに向かい合ったことはないんじゃなかろうか。
やり出したからにはやり遂げてみせる…!
格好良いとこひとつでも見せたいじゃんか…!
俺だってやる時はやるんだ…!!

